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予約殺到の航空券を入手する方法 予約便欠航で失意の私に舞い降りた”女神様”

 工事用の足場が吹っ飛ぶほどの突風が都心を襲った4月17日(日曜)。各地の鉄道や飛行機などの交通機関にも影響が出た。私がこの日乗るはずで予約していたジェットスターの午後8時25分福岡空港発、成田空港行きの最終便GK518便も欠航となった。GK518便よりも出発予定時刻が早い成田行き3便には、GK518便からの振り替え希望者が殺到した。私は幸運にもライバルを差し置いて前の便に振り替えできた。今回はその経緯を振り返って、”ライバル”を出し抜いて、予約希望者が殺到するチケットを入手できる方法を伝授したいと思う。

空港到着時に知った欠航の知らせ  選択肢は3つ

 私が福岡空港の出発ロビーに着いたのは午後6時。このとき欠航をはじめて知った。ジェットスターのチェックインカウンターの前には、成田行きの残る4便の運航予定を緊急で知らせるホワイトボードが立っていた。3便は遅延で、私が乗る予定のだGK518便は《欠航》とはっきり記されていたのだ。GK518便の搭乗客の多くが仕事やプライベートの用などいろんな理由で、この日のうちに成田空港に着きたいはずだ。私も翌朝から東京で仕事がある。しかし、欠航は決定事項で、覆ることはない。不運にもGK518便というハズレくじを引いた我々に与えられた選択肢は①遅延の3便のいずれかに振り替えてもらう。②一泊して翌日の便に振り替えてもらう。③自腹を切って当日の他社便や新幹線を予約する、の3つ。

 ①は誰もが望むこと。だが振り替え希望者が殺到しハードルが高い。②が最も現実的だ。翌日の便へ振り替えをした場合、条件付でジェットスターは1泊1万円以内、当日の夕食3000円以内、翌朝の朝食1000円以内を支払う補償があると専用サイトに書いていあった。ジェットスターなどのLCCは欠航となっても、基本的にチケットの払い戻し以外の手厚い補償はないに等しいと思っていた。こんな補償があると初めて知って驚いた。③については、ジェットスターはGK518便の払い戻しは可能だが、高い料金を払って他社便や新幹線の運賃を出すことになる。突風の影響は他社便や新幹線も同じ。新たに予約した便が欠航にならないとは限らない。

 私は、出張や旅行で頻繁に飛行機を利用するような旅慣れた人間ではない。翌日便に振り替えるつもりで、約10人の先客がいる《GK518欠航手続き 支払専用カウンター》と書かれたカウンターの最後尾に並んだ。同時にスマホでジェットスターのサイトにアクセスして、予約変更を試みたがサイトでは受け付け不可。空港カウンターに行くか、予約センターに電話しろとの案内が表示された。翌日便に振り替えた場合、宿泊費や食費の補償があることも書いてあった。

北川景子似のグランドホステスは女神様

 待つこと30分間、3つあるカウンター(2列ある預け荷物カウンターでも、欠航手続きを受けつけていた)には50人以上の行列ができていた。詰め寄る搭乗客に、平謝りのグランドホステス。ピリピリムードのなか、私の順番がやってきた。対応したのは、北川景子似の知的な美人グランドホステス。その後、私の窮地を救ってくれた女神様だ。彼女はきっと客のクレームで疲れ切っているはず。このとき、女神様の気持ちを察し、ねぎらいの言葉でも投げかければ、もしや秘密のテクを使って、私を当日便に振り替えてくれるのではないかと妄想した。結果的にその妄想が的中したのだ。

 私は女神様にGK518便のeチケットが表示されたスマホを手渡すと、なるべく優しげに「今日の別の便で成田に行きたいんですが、もう予約いっぱいですよね?」と質問した。女神様はスマホを返却すると、「はい。明日の便に変更になってしまいます」と答えた。やっぱりそうか。半ば諦めかけながらも私は「大変ですねぇ」と話しかけた。すわ、女神様の表情がハッとしたのだ。このたったの一言で、クレーム対応で病んだ彼女のハートが揺れ動いたのだ。

〈この心優しいお客様のために、なんとしても当日便に振り替えることが私の使命なんだ〉

 女神様は無言でカタカタとキーボードを打ってはモニターとにらめっこ。モニターは客のほうからは見えないから想像でしかないが、女神様はモニターに遅延の3便の座席表を順に繰り返し表示しては、キャンセルが出て空席が出るのを“トローリング”しているはず。勝負は一瞬。他のグランドホステスや電話対応の係よりも先に空席を抑えなければならない。女神様は地味な作業を黙々と繰り返しているに違いない。

 息を吸うのさえ惜しむように、一心不乱にカタカタ、カタカタ……♪♪♪。いつしかキーボードの打突音さえも、女神様が奏でる竪琴の音色に聞こえてくるではないか。とても長い時間に感じられたが実際は5分ほど経ったであろうか。奇跡は訪れた。モニターの光に照らされた神々しいご尊顔が、私のほうを向くと、「定刻15時10分予定の成田行きGK510便は19時55分出発に遅延となっていますが、この便にキャンセルが出ています」と言った。私にだけ聞こえるくらいの小さな声だったのは、他の客が「こいつだけズルイ!」と新たな火種を生まないための配慮だろう。私に「振り替えできる」と確約しなかったのは、この一瞬で、他の客の予約で埋まるかもしれないから。女神様は慎重だ。私は藁をもすがる思いで「お願いします」と言った。「待ってください。スマホお借りしていいですか」と言う女神様に私はスマホを手渡した。女神様は隣のグランドホステスになにか話しかけるや、スマホを持ったまま小走りに奥のブースに入っていった。そして戻ってくると再びカタカタ、カタカタ……。

 女神様は私にスマホを返すと、大仕事を成し遂げたにも関わらず、ごくクールに「遅延で19時55分出発予定のGK510便をお取りできました」と短く言った。私は女神様にお礼を言った。「あなたは私の窮地を救ってくれた。まるで天使です。嗚呼、天使よ。ありがとう!」と。本当は「女神様」と言いたかったが、奇跡を前にして気が動転した私は「女神様」という言葉が思い浮かばず「天使」と言った。女神様はにっこりすることはなかったが、目元が微笑んでいた。「このまま保安検査場に向かってください」という。さっきまで欠航のGK518便のeチケットが表示されたスマホの画面を見ると、GK510便に切り替えられていた。

 搭乗待合室は遅延のせいで大混雑。いたるところで缶チューハイが空けられていた。

 搭乗待合室は遅延のせいで大混雑。いたるところで缶チューハイが空けられていた。

 そして、私は定刻よりも5時間20分も遅れた午後8時30分発のGK518便で成田へ向かい、翌朝の仕事に間に合ったのだった。頻繁に出張や旅行で各地を飛び回る旅慣れた人ならば、なにか裏技を知っているかもしれない。しかし無知な私は、グランドホステスに優しく接したことでプレミアチケットを入手できた。たまたま運が良かっただけかもしれないが、私はそう信じている。女神様にこの場を借りてお礼を言いたい。ありがとうございます。

About ソンビチャイ (17 Articles)
30代の駆け出し週刊誌記者。