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移民都市・深圳をゆく その17「深圳最大の工場は、工場というよりも一つの町だった」

敷地内にはスーパーからファーストフード店、病院、学校まで

深圳には、iPhoneやiPadなどのアップル製品を下請けで製造している台湾系企業の富士康科技集団(フォックスコン)の工場がある。電子機器製造の場合は「下請け」とはいわずに「電子機器受託生産」(EMS)というようだが、いずれにしてもフォックスコンの工場の場合、”下請け”などという言葉から受けるイメージからはほど遠い、巨大な工場地帯となっている。

フォックスコンの正門。荷物を運ぶトラックが次々と通り抜けていく

深圳にはフォックスコンの工場が2カ所ある。総本部がある龍華工場は深圳北部に位置し、いろいろネットで検索したところ、おそらく面積は敷地の総面積は2.3平方キロ。これは東京ディズニーランドが4つ強入るほどの広さである。2011年に河南省鄭州市に主力工場を移すまでは、ここがフォックスコンの最大の工場で、一時はここで40万人ほどが働いていたといわれている。

工場の敷地内には製造工場の建物や従業員たちの宿舎だけではなく(中国のほとんどの工場は従業員たちのための宿舎を工場敷地内またはその近くに併設している)、スーパーや病院、映画館、学校、娯楽施設まであり、従業員たちは敷地内で仕事から生活まですべてをまかなうことができるようになっている。

おそらく敷地内のメインストリート

2010年ごろ、アップル製品を生産する中国の工場で従業員が相次いで自殺するという事件が起こり、日本でも話題になったと思うが、その工場というのがここである。

工場の敷地内には、敷地内の各地を結ぶバスが走っており、通りには店や飲食店、悩み事相談所のようなものが並んでいる。もはやここは単なる工場ではなく、工場が並ぶ一つの小さな町のようだった。

敷地内を走っていたバス。深圳市内を走っているバスとは形がまったく違うので、工場専用のバスであることが分かる

台湾系ファーストフードチェーンの「徳克士(Dicos)」も

非番なのか、私服姿で歩道を行き交う従業員たち

そして、その広大な工場エリアの周囲にも、この工場で働く人たち向けの町が形成されている。小さな食堂、従業員たちが住むアパート、スーパー、市場などなど。なかには工場の従業員募集に応募してくる人たちを受け付ける専用の窓口まである。

敷地外から見たフォックスコンの龍華工場。工場らしき建物が延々と続く

フォックスコンでは工場内での製造段階におけるロボット化を数年前から進めており、一部の工場ではすでに完全自動化しているという。つまり、かつてはここで何十万人という従業員が働いていたが、いつかはそれも完全にロボットに取って代わられるようになるものと思われる。

深圳は現在、多くの労働者が集まって物を作る労働集約型製造業からハイテク産業への転換を図っている最中である。その時、こういった工場地帯はどのように変わっていくのだろうか。

佐久間賢三
About 佐久間賢三 (40 Articles)
週刊誌や月刊誌の仕事をした後、中国で日本語フリーペーパーの編集者に。上海、広州、深圳、成都を転々とし、9年5か月にもおよぶ中国生活を経て帰国。早稲田企画に出戻る。以来、貧乏ヒマなしの自転車操業的ライター生活を送っている。