新着記事

移民都市・深圳をゆく その16「中国のお節料理といえば?」

 あと1ヵ月もしないうちに、旧暦の新年である「春節」(チュンジエ)を迎える。2018年は2月16日が初日である。中国では公式には前日の15日から22日までの1週間が春節休みとなっている。

 ところが実際には、春節の2週間くらい前から、都市部に出稼ぎに出ている人たちが故郷に戻る大移動が始まる。そして、春節が終わるとまた都市部に戻ってくる。それが春節の2週間後まで続く。

 ほぼ1ヵ月に及ぶ期間中の旅客輸送のことは「春運」(チュンユン)と呼ばれ、この間に中国国内を移動する人の数はのべにして30億人(30万人ではない)以上。この間、交通機関はまさにフル稼働状態で旅客を運び続けていく。

 最近は春節の間に海外旅行に出かける人も多くなったが、日本のお正月と同様、伝統的に春節は故郷に戻って両親や親戚など、家族とともに過ごすものである。そして、日本の正月がお節料理を食べるのと同様、春節用の特別な料理を食べている。

 日本のお節料理が全国各地でそれぞれ少しずつ異なるように、中国の春節料理も地方によって大きく異なる。ましてや国土面積が日本の26倍も広い中国である。その違いが日本以上に大きいであろうことは容易に想像できる。

 深圳の場合、広東省の都市であるものの中国各地からの移民が多数を占めるため、これぞ深圳の春節料理といったものはない。それぞれの出身地の人がそれぞれの地方の春節料理を食べているものと思われる。

 とはいっても深圳は、出稼ぎの人が多いため春節の間はみんな故郷に帰ってしまって人が極端に少なくなり、街はものすごく静かになる。日本でいえばお正月の間の東京・丸の内のような状態である。

 というわけで春節の間に深圳にいても、中国人の知り合いたちはほとんどが帰郷してしまっていて、遊んでくれる人がいない。そのため、深圳では春節料理を食べる機会がなかった。

 ところがある年、中国東北部にある黒竜江省出身の友人夫婦が、故郷に帰らず深圳で春節を過ごすことになった。彼らの両親が深圳に来ていたからである。

 中国の東北人といえば、なんといっても餃子である。春節に限らず、彼らは何か祝い事があると、必ず餃子を作って食べる。しかも彼らは、出来合いの餃子を買ってきたりなどしない。すべて手作りである。しかも、皮からちゃんと作るのである。

 そうして、餃子づくりが始まった。みんなでワイワイガヤガヤ言いながら、慣れた手つきで手際よく皮を作っていく。

お団子ほどの大きさの生地を、小さな麺棒で丸く薄く伸ばして皮にしていく。簡単そうに見えるが、慣れないとうまく作れない

 あるていどの数の皮が出来上がると、今度は手分けして肉餡を皮で包んでいく作業が始まる。餃子を包むのなんて、子供の頃に母親の手伝いでやって以来、ウン十年ぶり。かつては日本の家庭でもこうやって手で餃子を包んでいたものである(さすがに皮は買ってきたものだったが)。

さすが東北人たち、1個を作るスピードがものすごく速い。こちらが慣れない手つきで1個作っている間に3個は作る

出来上がった餃子。これからこれを茹でていく

 ご存じの方も多いかとは思うが、日本でよく食べられている焼き餃子というのは中国では非常にマイナーで、茹で餃子が主流。しかも中国の餃子はご飯のおかずなどではなく、これが主食である。そのため日本の餃子に比べると皮が厚く、食べ応えがある。

 ただ、春節の時に食べる餃子は、いつもの餃子とちょっと違う。たくさん作った餃子のうち、1つか2つの中に5角(約8.5円)や1元(約17.5円)のコインを入れておくのである。これに当たった人はその年は運がいいとされている。

いつの間にこんなに作ったの?というくらいたくさんの料理がテーブルに並んだ

 すると、筆者が食べた餃子から5角コインが出てきた。1元コインではないから、いわば中吉といったところか。ただこのコイン、そんなにきれいなものではなかったので、衛生的にはかなり疑問符がつく。まあ、春節のお祝いの席でそんなことを言うのも無粋なので、コインを餃子から取り出すと、その餃子はそのまま食べた。

 中国東北人たちの餃子パーティ、またいつか参加できる機会があったらと思っている。

春節といえば爆竹。市街地では禁止されていたが、あちこちから爆竹の鳴る音が聞こえてくる。ちなみに現在は、大気汚染に深刻な影響があることから、完全禁止になっている(はず)

佐久間賢三
About 佐久間賢三 (39 Articles)
週刊誌や月刊誌の仕事をした後、中国で日本語フリーペーパーの編集者に。上海、広州、深圳、成都を転々とし、9年5か月にもおよぶ中国生活を経て帰国。早稲田企画に出戻る。以来、貧乏ヒマなしの自転車操業的ライター生活を送っている。