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vol.1「御嶽山噴火で、直後の救出を規制した長野県の事なかれ主義」

 御嶽山噴火(9月27日)では、噴火の4日後(10月1日)に自衛隊を使って1日に35人の心肺停止者を搬送した大作戦が展開された。その対応ぶりについて、災害の事後処理の大きな前進だという評価が高まっている。

 しかし、その前日(9月30日)、長野県は救助隊を終日にわたって入山規制していた。規制の理由は、晴天にもかかわらず、火山性ガスや微動などのおそれがあったため。「もしかしたら生存者がいたかも知れないのに」──地元では、長野県の対応に無念さをぶつける声が広がっている。

 長野県は2次災害を心配したのだろうか。だが、噴火は水蒸気爆発であり、溶岩流も噴出していなかった。規制するほどの心配はなかったはずだ。なのになぜ?

 一部報道によると、設置されていた地震計が1年前から壊れていて、長野県はそれを放置していたという。本当なら、噴火予知できないのは「人災」だったことになる。また、気象庁の噴火予知連絡会も、会見で「火山噴火を予知することは不可能」と開き直ったことも長野県の対応を後押ししたようだ。これらに過剰に反応した長野県は、あの日、「とりあえず入山規制」というその場を繕うだけの対応をしたのではないか──。

 1日の “大作戦” の日、自衛隊第12旅団広報室の井上薫1等陸尉は、ヘリポートとなっている王滝村松原公園で、「自衛隊としては救助優先。昨日の規制は、ちょっと心残りでしたね」と述べ、 “無駄”になった1日を悔いていた。

 なるほど、その後の救助を見ると、長野県は、自衛隊ヘリが飛行できるかどうかの天候判断だけを行い、ガスや火山性微動による入山規制は行っていない。つまり、前日の対応は、不必要な入山規制だったというわけだ。

 翌週の10月6日には関東東海地方に台風被害があったが、笑えない笑い話はここにもある。この日、東京港区などは、2万世帯以上に避難勧告を出したが、実際に避難したのは6人だけだったというのだ。

 内閣府は、昨年の大島土砂崩れの教訓として、「空振りも怖れるな」と、自治体に避難勧告を指示した。だが、これはあまりにおせっかいだ。自治体は自然災害を怖がっている。その対策として「避難勧告」「入山規制」すればいいと思っているだけではないか。

 さらに踏み込んでいおう。緊急性の救助は、可能性の低い火山ガス災害より優先する。大島の被災は、救出の優先順位や災害の根本を究明することが先だ(原因は、観光道路の建設による斜面の切り崩しにある)。目先の役所の体面を取り繕うだけでは、進歩はないのだ。

 生存していたかも知れない被災者を確認できなかったことが、悔やまれる。(sp)

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