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自転車編 第3回「続けるための小道具」

 飽きずに単調なトレーニングを続けるには、どうしたらいいだろう。いちばん簡単なのは誰かと競うことだ。そう、走ることを知った幼いころからおなじみの「かけっこ」がまさにそれ。“ヨーイ、ドン!”で同時に駆け出して、先にゴールインしたほうが勝ち。負けるとくやしいから何度もくりかえす。それでも勝てないときは、特訓して再び勝負を挑む。これこそアスリートの原点だ。必要なのはスタートとゴールの目印、それと競争相手。それ以外には、なにも必要ない世界。じゃあ、もし自分一人だけしかいないときには、どうすればいいのだろう?

 答えは簡単、自分と競えばいいのだ。自分と競うと言ったって、自分がもう1人いて一緒に走ってくれるわけがない。そこで人間はそれを可能にするために、歴史的大発明をした。数という便利な分身を生み出した。時間や空間を数という尺度であらわすことで、自分を客観的に見ることができるようになった。

 なんとも解りにくい話でのスタートとなった第3回は、「自転車に乗って、ただ走っているだけじゃつまらない」と感じ始めたとき大いに役立つ小道具。「サイクルコンピューター」のはなし。

 同じコースで時間をはかって走ってみよう。1日めは60分。2日めには54分だったとする。1日めの自分に2日めの自分は勝ったのだ。3日めに56分だったら、1日めの自分には勝ったが2日めの自分には勝てなかったということになる。たとえ自分1人きりでも、時間をはかることで何人もの自分と競うことができるわけだ。

 いつも同じコースを走るだけの記録なら、腕時計とノートがあれば事足りる。でも、きまぐれに「今日は違うコースを走ってみよう」と思ったら? 「時間がないから今日は30分だけ走って帰ろう」なんていう日の記録はどうしようか?

自転車走行時の詳細なデータを計測、記録する

 自転車走行時の詳細なデータを計測、記録する装置をサイクルコンピューターという。センサーで車輪やクランクの回転数を計測し、時計の時間データと組み合わせることで、現在速度、平均速度、最高速度、加速度、走行距離、積算走行距離、ケイデンス(1分当たりクランク回転数)、走行時間、積算走行時間、などを計測。それらをボタン操作ひとつで切り替え表示させることができるアイテムだ。高価なものほど軽量、高機能で、ロードレーサーの競技目的にかなった設定やデータ処理が可能だが、エクササイズで楽しみながら走るだけなら、そこまでの機能は必要ない。

 もっと手軽に使うなら、走った距離や時間、高度差、コースや消費カロリーなどを自動的に記録してくれるスマホ用のアプリがあるのをご存知だろうか。スマホさえあれば誰でも簡単にアプリをダウンロードするだけで準備は終了。500円程度の有料アプリから無料版のアプリまで、種類も豊富で選択肢は広い。この手のアプリで最大のメリットは、GPS機能を利用するため、自転車にセンサーを取り付ける必要がないこと。つまり自転車を選ばないのだ。身に着けていれば、あとは勝手にデータが記録され蓄積されていく。

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 データの表示が自転車に最適化されたGPSナビというだけなので、毎日ちがう自転車に乗り換えてもいいわけで、ママチャリで走るにはもってこいのサイクルコンピューターだ。ただし、常時GPSを使用するのでバッテリ消耗が激しく、長時間のツーリングには不向きかもしれない。私がママチャリ激走トレーニングで使ってみた「ランタスティック・ロードバイクPRO(runtastic road bike PRO)」(500円、無料版もあり)はApp Storeの評価で星4.5という人気アプリ。

 見やすいディスプレイには、走行時間、走行距離、時速、平均速度、最大速度、消費カロリー、高度、勾配率などを任意に選択して表示できる。そのうえ、地図に現在位置が表示され、移動の履歴も軌跡としてデータに蓄積される。別売のセンサーを併用すればケイデンスや心拍数などもデータに加えられる高機能タイプだ。

 記録された履歴データの一例。9月13日、距離18.1km、時間01:00:38、平均速度17.9km/h、最大速度34.7km/h、高度上昇161m、高度下降269m、カロリー378kcal、平均ペース03:21min/km、快晴、気温31.0℃。9月20日、距離81.6km、時間03:54:28、平均速度20.9km/h、最大速度39.7km/h、高度上昇492m、高度下降495m、カロリー1845kcal、平均ペース02:52min/km、快晴、気温28.0℃。GPSによる位置情報をもとに計測しているので、上昇高度、下降高度などは、かなりの誤差が生じていると思われるが、そこは目をつぶろう。それよりなによりバッテリ消耗の激しさが致命的で、距離が100kmにもなるとバッテリー切れで記録が途中で停止していた。

自転車取り付けタイプのサイクルコンピューター

 バッテリ消耗のストレスを解消するならやはり自転車取り付けタイプのサイクルコンピューターだ。
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 ここで、ご紹介するのはママチャリ用に購入したキャットアイ、ベロワイヤレス プラス(CC VT-210W)。

 表示できるデータは走行速度、走行時間、走行距離、平均速度、最高速度、消費カロリー、CO2削減量、積算距離、時計の9機能。必要十分なデータ表示機能がありながら希望小売価格5000円+消費税というコストパフォーマンスの高いモデルだ。表示部本体とセンサー部の情報伝達がワイヤレス方式なので取り付けが簡単なのがうれしい。ただし、表示部本体をハンドルバーなどに取り付ける際、LEDのハイパワーライトと近接(10cm以下)させて取り付けるとLEDライトの発する微弱な電磁波で誤作動し、正しく表示されなくなる場合があるので注意が必要。

 走りはじめるとスリープから目覚めて計測がスタートする。使い方としては、1回(1日)の走行が終了したらノートなどに必要なデータをメモしてリセットする。積算距離以外はメインボタンの長押しでリセットされる。iPhoneのカレンダーに記録した私の走行記録の一例。10月4日、距離100km、平均速度21km/h、最高速度34.9km/h、消費カロリー1537kcal、走行時間4時間45分。10月18日、走行距離92.35km、平均速度20.2km/h、最高速度38.1km/h、消費カロリー1228kcal、走行時間4時間34分。

 エクササイズ走行には、走行距離と平均速度、走行時間くらいで十分だ。消費カロリーは今回試した2種類のサイクルコンピューターでもかなり差があるので正確とは思えないが、ダイエット目的のおじさんにはちょっとうれしくなる表示機能かもしれない。ただし、カロリー消費したからといって、そのぶん飲み食いし過ぎないようご用心。
(つづく)

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About 樋口琢生 (29 Articles)
東京生まれ。1989年より早稲田編集企画室ルポ班に在籍。週刊誌記者、ガイドブック編集、単行本制作などに携わる。登山、キャンプ、カヌー、自転車などアウトドア全般が趣味。