新着記事

移民都市・深圳をゆく その3「香港と大陸側を車で渡る──口岸(後編)」

 深圳と香港の間に8つある「口岸」(イミグレ)のうち、前回は深圳の“メインエントランス”ともいえる羅湖口岸についてご紹介したが、後編の今回は車でも通過することのできる2つの口岸について取り上げようと思う。

グーグル・マップを利用して加工した深圳の地図。手書きの赤丸●が口岸

グーグル・マップを利用して加工した深圳の地図。手書きの赤丸が口岸

唯一の24時間オープンの口岸「皇崗口岸」

 前回取り上げた羅湖口岸の西側に並ぶ2つの赤丸。左側が「福田(フーティェン)口岸」で、右側が「皇崗(フアンガン)口岸」である。大陸側は2つの名称に分かれているが、香港側は「落馬洲(ロックマーチャウ)口岸」で統一されている。

 福田口岸のほうは、羅湖口岸と同様に香港側は電車の駅になっていて、そこから電車に乗って香港中心部に向かうことができる。深圳側もここまで地下鉄が接続されている。羅湖口岸と違うところは、香港側もここからすぐにイミグレの建物の外に出られること。わずかではあるがバスの路線もある。

右側は深圳、川を挟んで左上の水田地帯が香港(ただし水田地帯の一部は深圳に属している)。この写真では川の先あたりに皇崗口岸と福田口岸がある

右側は深圳、川を挟んで左上の水田地帯が香港(ただしこの水田地帯の一部は深圳に属している)。この写真では川の先あたりに皇崗口岸と福田口岸がある

 そして皇崗口岸。羅湖口岸がメインエントランスなら、皇崗口岸は裏口のようなところ。8つある口岸のうち、ここだけが24時間オープンで、深夜0時から朝6時すぎまでの間は、大陸と香港の間をこの口岸しか通り抜けることができない。ここと香港中心部各地を結ぶ直行バスも24時間走っており、そのため週末の深夜などは、深圳に夜遊びに来る香港人が意外に多くここを通ったりする。

 そして皇崗口岸のもう一つの特徴が、車で通り抜けもできること。ここを通り抜ける車のほとんどが大型の輸送用トラックで、香港の港に陸揚げされた工業製品用の材料などが、ここを通って深圳やその北の東莞、広州といった工業地帯に運ばれていく。

皇崗口岸(写真左側)と香港側の落馬洲口岸をつなぐ橋。背景に見えるのは深圳の高層ビル

皇崗口岸(写真左側)と香港側の落馬洲口岸をつなぐ橋。背景に見えるのは深圳の高層ビル

 大陸側と香港側では交通規則も管理システムも異なっており、そもそも、かつてはイギリスの植民地だった香港はイギリスと同様に右ハンドル左側通行(つまり日本と同じ)で、大陸側は左ハンドル右側通行だ。車がその両方で走るためには、両方の通行許可証、つまりナンバープレートを取得する必要があり、これをダブルナンバーというのだが、聞いたところによると、一般の車をダブルナンバーにするのは簡単ではなく、かなりのお金が必要らしい。

2つのナンバープレートを付けた香港の車。黄色が香港のナンバーで、黒が大陸のナンバー

2つのナンバープレートを付けた香港の車。黄色が香港のナンバーで、黒が大陸のナンバー

観光バスの通り道「深圳湾口岸」

 皇崗口岸のさらに西側、深圳湾をまたぐようにして走る道路の先にあるのが「深圳湾口岸」である。陸路で両側をつないでいる口岸は、大陸側と香港側にそれぞれイミグレの建物があるのが普通なのだが、この深圳湾口岸だけは、深圳側にある一棟の建物の中に、大陸側と香港側のイミグレが同居している。

 ここも車が通り抜けることができ、大陸から香港に遊び(&買い物)に行く中国人観光客が乗る観光バスが通り抜けることが多く、旅行シーズンなどは大陸の田舎者たちでごった返す。

香港側から深圳湾大橋を渡って深圳へ向かう路線バスの中から

香港側から深圳湾大橋を渡って深圳へ向かう路線バスの中から

 観光バスの乗客の場合は、ここを通り抜ける際にいったんバスから降りて、イミグレ審査を受けなければならないが、乗用車やバンのような小型車両の場合、車から降りずにそのままイミグレ審査を受けることができる。香港国際空港と深圳各地を結ぶリムジンサービス(といっても車はバン)などは、ここを通り抜けていく。いちいち車を降りる必要がないので、乗客にとっても便利だからだ。

 というわけで、前編・後編で4か所の口岸をご紹介したが、これ以外4か所は、一般の人が利用することはあまりない。一番東側にある「沙頭角(シャートウジァオ)口岸」は街の中心部からは離れており、トラックの通過がほとんど。羅湖口岸のすぐ近くにある「文錦渡(ウェンジンドゥ)口岸」も同様。西側の海沿いにある2つの口岸はフェリーに乗って香港に行く時に通るところとなっている。

 深圳に住んでいる日本人にとって、香港はとても身近な場所である。いわば埼玉に仕事場も住居もあって、隣の東京にいつでも遊びや買い物に行けるといった感じといえば分かりやすいだろうか。ただし、出かける際にはパスポートが必要なところが違う点といえる。

佐久間賢三
About 佐久間賢三 (31 Articles)
週刊誌や月刊誌の仕事をした後、中国で日本語フリーペーパーの編集者に。上海、広州、深圳、成都を転々とし、9年5か月にもおよぶ中国生活を経て帰国。早稲田企画に出戻る。以来、貧乏ヒマなしの自転車操業的ライター生活を送っている。