魔都上海を巡る その1「上海と山手線」

アヘン戦争終了後の1845年から約100年間、アメリカ、イギリス、フランスといった諸外国は、上海に「租界」と呼ばれる外国人居留地を設けた。租界の独特な雰囲気は、のちに魔都という呼称を生む。魔都上海を巡ろう。
筆者は現在、上海に住んでいる。上海は中国一の大都会であり、日本人にとって一番馴染みのある、またはよく耳にする都市だろう。中国の地図を見て、上海の位置をピタリと指させる人はほとんどいない。筆者の経験でもいいとこ3割だ。地図を確認していただければわかるが、上海は鹿児島県とほぼ同じ緯度上にある。同じ緯度上には武漢、成都も並んでいる。
上海市内はどうか。距離的な感覚を得るために、中国の検索サイト「百度」にある上海中心部の地図に、同縮尺の山手線の路線図を当てはめてみよう。
こんな重ね図を見せられても、上海在住、または上海に来たことのある人にしかわかってもらえないかもしれないが、しばしお付き合いいただきたい。

「百度」にある上海中心部の地図に、同縮尺の山手線を当てはめてみた(百度のサービスページから引用し加工した)
山手線をどこに置くかで迷ったが、発展著しい川の東側の「浦東」は無視して、「浦西」を重視した。すると、ちょうど山手線の内側あたりが上海の中心部に位置することになる。
上海の繁華街で言うと、「中山公園」が新宿、「静安寺」が市ヶ谷、「人民広場」が水道橋、「南京東路」が御茶ノ水といったところだ。中央線沿いに並ぶイメージにも合う。瀟洒な繁華街という意味では、「徐家匯」が青山、「淮海中路」が永田町から西へ走る青山通り、日本人が多く住む古北「虹橋」は世田谷区に相当する。
空港の位置も東京に似ている。上海には2つ空港がある。古いほうの「虹橋空港」は東京でいえば羽田空港だが、位置的には上北沢あたりになる。地図では見えないが、成田空港と言えるのが「浦東空港」だ。こちらはちょうど千葉市あたりに位置する。
上海を東京になぞらえると、こんな感じだ。
上海市の面積は6340平方キロメートルで東京都の約3倍、人口は約2400万人で東京の約2倍だ。そうは言っても、中心部は東京同様、山手線内にほぼ収まっているところがおもしろい。
魔都の由縁となった租界も、その中心部にある。次回は、租界を巡ろう。