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移民都市・深圳をゆく その11「休日の観光は異国情緒たっぷりのマカオへ」

かつてポルトガルの植民地だったマカオは、“カジノの街”としてよく知られている。また街中はヨーロッパとアジアが融合した異国情緒あふれる雰囲気で、ユネスコの世界文化遺産に登録されている観光スポットがあちこちにある。このマカオは深圳から見ると珠江デルタの向こう側、海を挟んだところにあり、フェリーに乗って1時間ほどの距離にある。そのため、香港とはまた違ったプチ旅行を日帰りで楽しむこともできる。

観光とカジノと女遊びの街

と、ここからマカオの観光スポットについて説明していく文章を一旦は書き上げたのだが、そんなことはどこにでも書いてあることなので、別のことを書いていくことにしよう。

マカオは観光とカジノの街だが、正直いって住むには退屈そうな街である。取材のために数日間滞在したのと、友人と日帰りで2回遊びに来たことがあるだけなので、あまり偉そうなことは言えないが、街としての“味”に欠けるような気がする。

観光名所のセナド広場がある、マカオ観光におけるメインストリート。通りの名称はポルトガル語で「Avenida de Almeida Ribeiro」(アルメイダ・リベイロ通り)、漢字で書くと「亞美打利庇盧大馬路」(大馬路は大通りという意味)とやけに長ったらしいが、普通は短く「新馬路」(新しい通りという意味)と呼ばれている

たとえば香港などは、なんでもない住宅街の通りを歩いていても、ときおり面白そうな食堂や店、風景があったりして、それなりに楽しいのだが、マカオは単に古いアパートがならぶばかりで、面白みがない。ブラブラ歩いて楽しそうな商店街もない。観光に来るのは面白いのかもしれないが、住んでもつまらなそうなところである。

新馬路の裏側にある土産物屋街

路地をさらに奥に行くと、殺風景な住宅街となる

中心部は中心部で、観光地やホテルの周りには、大きな健康センター、いわゆるサウナがいたるところにある。どこも性的サービスを提供しているので、サウナの位置が表示されている地図を見ると、まるでここは吉原かと思うほどサウナが密集している。

マカオのサウナ、そこがどれだけ素晴らしいところかは、いろいろと経験者に話を聞いていたこともあって、一度くらいは……と思っていたのだが、ついぞ行く機会はなかった。

いや、実は行ったことはある。それは取材のために数日間マカオに滞在していた時のことで、予算が少ないのでホテルに泊まるほどの金もなく、夜中まで仕事をして近くのサウナに行って、そこで寝ていたのである。サウナの個室ベッドに“素泊まり”するだけならホテルに泊まるよりずっと料金が安く、予約も不要で朝食つきなので、ちょうどよかったのだ。でも今から思うと、何もしなかったのはもったいないことをしたような気がする。

中国人の友人と深圳からマカオに遊びに行った時は日帰り。取材であちこち回って主な観光スポットは知っていたので、案内して回って、名物のエッグタルトやミルクプリンを食べて、カジノに入ってお遊び程度にギャンブルをしておしまい。ポルトガル料理の店かマカオ風ポルトガル料理の有名店にも連れて行こうとしたが、歩き疲れてそこまで行くのが面倒ということだったので、そのへんの普通の店で食事をした。

それじゃあマカオの本当の魅力を味わったことにならない……のだろうが、まあ深圳からの日帰り旅行ならこの程度。というか、ギャンブル好きでもないかぎり、これでマカオ旅行は十分なような気がする。

で、ここからは、せっかく書いた原稿なので、最初に書いたものも掲載しておくことにしよう。

世界遺産だらけの街

深圳からマカオへは、市の西部にある港からフェリーに乗って行くことになる。その際には、香港と同様、中国人ならマカオに行くための通行証、外国人ならパスポートが必要となる。

地図左側の細い赤線で囲まれたところがマカオ。太い線がフェリーの路線。マカオの下側の港への路線もある(地図はグーグルマップより)

天気が良ければ海が荒れることもなく快適で、マカオの港に着くと、まずはタクシーに乗ってマカオ観光の中心地ともいえるセナド広場に向かう。この周辺にはさまざまな観光名所やレストランがあり、どこも歩いていくことができる。

セナド広場。奥に進んでいくと、聖ポール天主堂跡に向かう路地がある

セナド広場から狭い路地を歩いて坂を登っていくと、そこにはマカオのシンボルともいえる聖ポール天主堂跡がある。この教会は16世紀末に建てられたもので、1835年に火事で焼け、今はファサードのみが残っている。それ以外に何か特別なものがあるわけではないが、世界遺産の一つでもあるし、せっかくマカオに来たからには見ておいたほうがいい場所である。

聖ポール天主堂跡に向かう路地は狭く、行き交う人で混雑する。路地の両側には土産物屋が並ぶ

聖ポール天主堂跡。路地の坂道を登ってようやく着いたと思ったら、さらに階段を登ることになる

この周囲に点在している全部で8つの広場と22の歴史的建造物が「マカオ歴史地区」としてユネスコの世界文化遺産に登録されている。いうなれば街中が世界遺産みたいなものであり、観光としての見どころはたくさんある。

そしてマカオのもう一つの見どころが、カジノである。マカオにある大きなホテルの中には必ずといっていいほどカジノがあり、24時間365日、一晩に何千万円もの勝負をする本格的なギャンブラーから、小銭をちまちまと賭けて一喜一憂する小市民ギャンブラーまで、さまざまな人たちがギャンブルを楽しんでいる。

マカオのカジノの“老舗”ともいえる「カジノ・リスボア」

香港とマカオを結ぶ全長55kmの橋も開通間近

下の地図を見ていただくと分かるように、マカオは中国大陸と陸続きになっている半島部分と、南側にある島の部分からなっている。島の部分はもともと南北2つに分かれた別々の島だったのだが、島の間が埋め立てられ、今では一つの島になっている。

地図の中央やや右がマカオ。マカオの半島側と島は橋で結ばれている(地図はグーグルマップより)

島の北半分には大きなホテル(もちろんカジノ付き)が並び、東側には海の上に空港の滑走路もある。島の南側は緑あふれる丘陵地帯となっていて、ビーチもあり、のどかな雰囲気が漂っている。

島部の南側にはひなびたビーチもある

現在、香港とマカオ、そしてマカオの北側にある珠海を結ぶ大橋が建築中で、すでに橋梁部分はつながり、来年には開通する見通しとなっている。全長55kmで、開通すれば香港とマカオが車で30分で結ばれることになるが、これは香港の西側にあるランタオ島(香港国際空港もここにある)からの時間で、香港中心部からだとなんだかんだで2時間はかかると見られている。

しかも、最近になって橋梁部分のコンクリート強度の偽装が発覚し、安全面での疑念も出ている。とはいえ、橋ができても深圳からは相変わらずフェリーで行くしかないわけで、あまり関係はない。

ただし、橋が完成すれば香港からマカオに向かう人が増えるわけで、ただでさえ狭いマカオにさらに多くの観光客が押し寄せることになり、混雑することは確実。行っておくなら今のうちかもしれない。

About 佐久間賢三 (40 Articles)
週刊誌や月刊誌の仕事をした後、中国で日本語フリーペーパーの編集者に。上海、広州、深圳、成都を転々とし、9年5か月にもおよぶ中国生活を経て帰国。早稲田企画に出戻る。以来、貧乏ヒマなしの自転車操業的ライター生活を送っている。