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移民都市・深圳をゆく その12「深圳と広州を結ぶドル箱路線の特急列車“和諧号”」

深圳に住んでいる(=働いている)と、香港だけではなく、広東省の省都である広州にも仕事の用事で行くことが多い(遊び目的で行くことはまずない)。深圳から広州までは、高速バスや車で行く方法もあり、だいたい2時間くらいで着くが、市の中心部から向かう場合、一般的には列車で行くことが多い。その列車というのが、時速200kmで走る特急列車の「和諧号」である。

強気の運賃設定のワケ

筆者が深圳に住み始めた2005年には、まだこの和諧号は走っていなかった。走っていたのは普通列車で、深圳駅から広州市の中心部にある広州東駅まで2時間以上かかっていたと思う。

深圳駅の駅前広場。写真の中央やや左にあるのが駅舎。写真の背中側には香港に行くイミグレの建物がある

そして2007年、同じ路線に和諧号が開通。深圳駅から広州東駅までノンストップの直行列車だと1時間弱(現在はノンストップ列車はない)、途中の駅(全部で3つあった、現在は4つ)を止まっても1時間10分程度と、これまでの半分の時間で広州まで行けるようになった(途中駅が4つとなった現在は1時間20分ほどかかる。また一部の列車は広州東駅からさらに先の広州駅まで行く)。

これが和諧号。中国の他の地域を走っている和諧号には、他のボディタイプのものもある。ちなみに「和諧」は中国語で調和という意味

昼間の時間帯だと10〜20分に1本の割合で出発するので、予約したり出発時間を気にしたりする必要もなく、駅に着いた時に乗れる列車の切符を買って乗れば広州に行くことができる。

深圳・広州間の運賃は、現在は79.5元(約1310円)。実はこれ、かなり強気な料金設定である。というのも、上海と杭州を1時間45分で結ぶ(つまり深圳・広州間より走行距離が長い)和諧号の料金は56元(約922円)、さらに速い高速鉄道(走行時間1時間5分)でさえ73元(約1202円)と、深圳・広州間の運賃より安いのだ。

和諧号の車内。清潔で乗り心地はいいが、三列席の真ん中はやはり窮屈である

つまりこれは、深圳・広州間の場合、両市の間を行き来するビジネス客が多いため、高い料金設定でも乗客数が見込めるからだと思われる。実際、本数が多いにもかかわらず、いつ乗っても列車はだいたい満員(全席指定)である。

現在は時速300キロで走る高速鉄道網が整備され、深圳市の副都心にある福田駅や北部にある深圳北駅から高速鉄道に乗って、広州だけではなく、その先の湖南省長沙市や湖北省武漢市、中国中部の重慶市、さらには北京や上海まで行くことができるようになった。

この高速鉄道、深圳北駅から広州南駅までの所要時間はわずか36分と、和諧号の半分以下。ただ、深圳北駅も広州南駅も市の中心部から離れており、広州南駅から広州中心部へ行くには地下鉄で30分以上かかる。

というわけで、深圳中心部と広州中心部を結ぶ和諧号の存在価値は変わることなく、今も高めの料金で毎日運行しているわけである。

車窓を見ている限りでは、とても時速200キロを出しているとは感じられないのだが

About 佐久間賢三 (40 Articles)
週刊誌や月刊誌の仕事をした後、中国で日本語フリーペーパーの編集者に。上海、広州、深圳、成都を転々とし、9年5か月にもおよぶ中国生活を経て帰国。早稲田企画に出戻る。以来、貧乏ヒマなしの自転車操業的ライター生活を送っている。