移民都市・深圳をゆく その14「大気汚染により徐々に霞んでいった深圳の空」
中国の大都市における大気汚染については、日本でも広く知られている。首都の北京では、あまりの空気の汚さに、家族連れで駐在していた日本人サラリーマンなどは、自分だけ北京に残り、家族は日本に帰国させたケースも多い。上海にも近くに大きな製鉄工場があり、遠くが霞んで見えない日もあるほどだ。では、中国第4の都市である深圳の状況はどうであろうか。
かつてはよく見えていた香港の山々も今は
深圳は市の北半分側が工業地帯になっているが、市の南側のほとんどが海に接しているため、工業地帯で汚染された空気のほとんどが海の方に流れていってしまうのか、北京や上海に比べると大気汚染の深刻度はかなり低い。
その一方で深圳の南にある香港は大気汚染度が進んでおり、かつては香港人たちから「悪い空気が北(深圳)からやって来る」という怨嗟の声もよく聞かれた(実際は深圳からの影響だけではなく、香港自体が発する大気汚染も大きな原因となっているのだが)。
そんな深圳ではあるが、日によっては大気汚染で空が霞んで見えることがある。筆者が深圳に住み始めた2005年ごろは空が青い日がほとんどで、オフィスビルの窓からは香港の山々がきれいに見えた。ところが、それからはだんだんと空がどんよりと霞む日が多くなっていき、香港がまったく見えない日が徐々に多くなっていったのだ。
それでも深圳はまだ他の大都市に比べるとかなりマシなほうだが、日本に一時帰国した際など、空港で乗ったバスが首都高の高架道路を走っているとかなり遠くの景色までがクリアに見え、空というのはこんなに澄んでいるものだったのかと、感動していたものである。
中国の大気汚染も最近ではニュースであまり取り上げられなくなっているが、これは決して大気汚染が改善されたからではない。単にあまりにも当たり前のことすぎてニュースバリューがなくなってしまっただけのことだ。
中国から日本に帰ってきてからというもの、懐かしいものはたくさんあり、いろいろな場所を再訪したいと思っているが、大気汚染のことを考えると、また住みたいとは思えないのが残念である。