新着記事

vol.14「東日本大震災の津波犠牲者26人に19億円補償。もはや自然災害は『人災』の時代になった。」

 つい先日まで「津波」は自然災害だったが、先般の2例目の判決で、避難誘導を怠った自動車教習所に、満額近い19億円賠償の判決が出た。26人が訴えたのだから、1人あたり7千万円ということになる。マイカー保険でさえ対人保障は1億円とか無制限の時代である。ようやくそれに見合う判決が出た。「津波被害」は人災だったということになる。「生徒を避難させなかった」というのが、学校側の敗訴理由になった。

 2年前の大島の豪雨土石流では、死亡不明が39人に上っている。実はあの土石流は、20年前に開通した観光道路そのものが崩れた。「山を切り崩した観光道路などなければ、土石流は発生しなかった」と地元ではいう。つまり道路工事の土木技術が未熟だったことになる。欠陥道路なのだ。いまどき新築ビルマンションは、大震災にも「倒壊しない」という前提で「地震保険」が成立する。ならば同じようにこの道路に「保険」はなかったのか。政府の見舞金が出たといっても、金額は知れているのだ。これがアメリカで裁判になれば、多分「津波」と同じように、政府に賠償金を請求できただろうと思う。

 昨年の御嶽山噴火はどうだろう。火山爆発こそは自然災害、不可抗力だと思えても「地震計が機能していなかった」し、ある程度の察知はあったらしいが「警告は皆無」でもあった。行政の怠慢である。これに責任が求められないのは、日本という国の民意が未熟だからではないかという議論さえある。

 同じく広島の土石流で分譲間もない戸建てが倒壊して、74人が亡くなった。ローンも残っている。不動産業界では「瑕疵責任は10年」という判例があるらしいが、しかし行政が宅地開発を許可して、民間が分譲した戸建てでの被災である。不動産が災害から安全かどうかなどは、100年単位が基準でもよさそうに思えるが、住民側がこの裁判を起こしたとしても、現状勝てる見込みは少ないのだ。

 例えば巨大な隕石が都市を直撃して大きな被害があったとしても「どうして自衛隊の迎撃ミサイルが撃破できないのか」という議論だってなきにしもあらず。北朝鮮が不用意に打ち込む弾道弾ミサイルには迎撃システムが機能するようだが、同じことではないかと思える。

 自然災害だけは防ぎようがないというのは昭和の時代の話で、いまどき災害の可能性だけは理屈で解明され察知できるのだから、被災の原因は住民自身の責任か行政の怠慢なのか、政府の本腰が期待されるところだ。(sp)

About 週刊誌グループ (34 Articles)
男性週刊誌、女性週刊誌、写真週刊誌など大手出版社編集部の契約記者として、第一線で取材執筆活動をおこなっているライター集団。政治、事件、皇室、芸能、実用、人物インタビューなど守備範囲は多岐にわたる。早稲田編集企画室の中核。