クレイマー的軽薄見聞録Vol.3「カゴメ野菜ジュース」の異常膨張:結果編──3倍もの商品が届いた。クレイマーは儲かる!?
お客さま相談センターに電話した翌日、大和運輸が「ふぐ」みたいに胴体の膨らんだ野菜ジュース紙パックを、引き取りに自宅へ来た。
そして、1週間もたたないうちに、携帯に調査結果報告の電話が入った。
要旨は、こんな内容だ。
外側のシールが破れて乳酸菌侵入、発酵。
・カゴメ野菜ジュースの紙パックは極薄アルミ、ビニールなどの5~6層シールで覆われている。
・今回の原因はその一番外側のビニール・シールが破損。
・このジュースには本来含まれていない“乳酸菌”が侵入し、発酵した。
なぜシールが破損したのかは、不明。
「めったにないことです」という女性の口調は、NHKの女性名物キャスターKを彷彿させるのだった。
めったにないことが、何故起こったの?
めったにないにしては、対応が手馴れすぎてない?
……まあ、いいか。もともと、とことん突き詰めるほどの問題とは思っていなかった。
ともあれ10年以上野菜ジュース、トマトジュース(缶、ペットボトル)を愛飲して、初めて「めったにないこと」に遭遇したのだ。
「今日明日にでも、宝くじを買おう! 当たるかも!」
などと口笛吹きながら帰宅すると、もうカゴメから宅急便の段ボール箱が届いていた。
ドッキドキしながら開ける。
お、お、すげぇ! 不良品は1本なのに、なんと3パックもの野菜ジュースが鎮座しているではないか!
1本100円のものが300円分にもなった。
「何だ200円か」と思いがちだが、倍率で言えば3倍である。
これを1台100万円の軽乗用車に例えれば、1台の欠陥車のユーザーにメーカーから3台×100万円=300万円が補填されたことになる(例えが適切じゃないな。こういうのを、まぬけの詭弁というのかも)。
1日に必要な野菜が、「これ1本」で摂れるの?
ところでカゴメの紙パックには、
「野菜一日 これ一本。ぎゅっと野菜350g分使用」
と大書してある。しかも「厚生労働省推進」の野菜摂取目標量と小さく書き添えてある。
「国民の健康と守る厚労省のお墨付きなんだあ! だったら1日にこれ1本飲めば、もう野菜は食べなくていいんだよね」
と思い込んでしまう軽薄な私だが、この機会に担当者に聞いてみた。
念のため、である。
担当女性の答えは、私の思い込みをあっさり打ち砕いた。
「加工、加熱によって、ビタミンCなどは破壊されます。逆にトマトのリコピン、ニンジンなどの橙色野菜のカロテンのように、ジュースにすることで身体への吸収率が高まる栄養素もあります」
つまり「野菜ジュースはあくまでも栄養補助製品。生野菜を食べなければ私たちの健康は維持されない」というわけ。
「野菜一日 これ一本」のタイトルは、私のような軽薄な人間に過大なイメージを抱かせる。
しかし誇大広告、虚偽広告、不当表示がまかり通るニッポンで、カゴメ野菜ジュースの品質、クレーム対応の敏速さ、飲用後の紙パックを畳ませる細やかな工夫(ゴミの量が減る)などを総合的に見ると、世界に出しても恥ずかしくないと、私は思う。
さて、皆さんはどう思われますか?
By 老人20面相