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vol.33「福山雅治がヨゴレ役!? 映画『SCOOP!』で大根仁監督がこだわったトコ」

 福山雅治主演の映画『SCOOP!』(大根仁監督)が公開中だ。そのストーリーは、───かつてスクープ連発の売れっ子カメラマンだった都城静(みやこのじょうしずか・福山雅治)。ある出来事で第一線を退き、今では芸能スキャンダルの小ネタを撮って食いつなぐ落ちぶれた日々を送っていた。一方、当時記者として静とコンビを組んでいた横川定子(吉田羊)は、いまや写真週刊誌『SCOOP!』編集部のヤリ手副編集長。静の真の実力を知る定子は彼の上司として、新人記者の行川野火(なめかわのび・二階堂ふみ)とコンビを組ませる。こうして昭和の遺物のような中年カメラマンと20歳過ぎの平成いまどき女子のコンビがスタート。はじめはぶつかりあっていた二人が、定子から次々と振られる大ネタを追って、ひとつ一つモノにしていくうちに、互いを認め合うスクープ連発のコンビへと成長していく───という老兵と新人類の間に芽生えて育っていく師弟関係を追うことで、どんな業界にもありがちな世代間ギャップのジレンマを描いた興味深い作品となった。

 この作品のウリのひとつは、福山雅治にとってこれが初のヨゴレ役だったこと。でも、ところかまわずタバコをすぱすぱ、セクハラ発言あたりまえのやり放題の時代錯誤オヤジみたいなキャラが強調されすぎて、福山の作りすぎな悪ぶった演技がイマイチなのだが、もう一つのウリであるハリコミや潜入といった取材現場シーンの描写におけるスクープ写真撮影のネタばらしは、なかなかリアルに再現されていて、実際にハリコミ取材に携わっている写真週刊誌の記者やカメラマンの間から「こんなにバラされたら営業妨害」と悲鳴が上がっているとか。

 それもそのはずで、この作品の撮影前に大根仁監督や二宮孝平助監督は複数の雑誌編集部に取材を敢行。隠密裏にナマの張り込み現場にも同行していたのだ。その時のエピソードは、大根監督自身が後日談として各メディアやプロダクションノートで明かしている。たまたま筆者も大根監督の熱心な取材活動を現場で目撃した。しかし、そんな仕事人の大根監督も、その指南役の中に、じつは福山雅治と吹石一恵の熱愛だとか二階堂ふみと新井浩文の熱愛記事をスクープした張本人がいたことまでは知らないだろう。

 そんなヤバすぎるプロたちの現場を目の当たりにして映画のシーンに盛り込んだのだから、あのハリコミ現場のディテールは現実に近いものだと太鼓判を押す。たとえば、路上駐車したクルマの中からターゲットを待ち伏せして撮影するなんていう手法は誰でも想像つくだろうけど、バッグの中にカメラを忍ばせてターゲットが入店している飲食店やスーパーマーケットに潜入するとか、携帯電話の電話帳にターゲットの車のナンバーなど個人情報を蓄積してスピーディーに検索、即座にターゲットを特定するなどあまり知られたくはない。また時には、複数のスタッフがトランシーバーで連絡を取り合い連係プレーで写真撮影を成功に導いたり、ターゲットを尾行する記者が案外すぐ隣や真後ろにいたりするのもリアルだ。もちろんカーチェイスや暴力行為などの違法行為は現実の取材現場においては御法度だから、映画ならではのデフォルメなのだが……。

 しかし、これら数々のマル秘テクニックも実は特別な機材や仕掛けを使うことはほとんどなく、少し知恵を絞ればだれでも実行可能な工夫の積み重ねによるものがほとんどだ。だから、実際にはあの程度のネタばらしをされたところで、仕事ができなくなることはない。記者やカメラマンが100人いれば、その何十倍も何百倍ものマル秘テクニックが生み出されているはずなのだ。(bt)

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男性週刊誌、女性週刊誌、写真週刊誌など大手出版社編集部の契約記者として、第一線で取材執筆活動をおこなっているライター集団。政治、事件、皇室、芸能、実用、人物インタビューなど守備範囲は多岐にわたる。早稲田編集企画室の中核。