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移民都市・深圳をゆく その10「週末は気軽に香港へお買い物」

以前にも書いたが、深圳のすぐ南隣は香港である。深圳と香港の間はほどんとが海と川で隔てられており、陸続きではあるものの“国境”沿いには高いフェンスが連なっており、勝手に出入りできないようになっている。深圳と香港の間には“深くて暗い川がある”のである。とはいえ、今では香港へ行く通行証さえ持っていれば、中国人は誰でも香港に行くことができる。特に週末などは、大陸側では買うことのできないものを買うために、多くの人が香港を訪れている。

人民元と香港ドルの立場逆転で香港の品物がお買い得に

深圳と香港の間には全部で8つのイミグレがあり(『移民都市・深圳をゆく その2「香港と大陸側を結ぶ出入口──口岸(前編)」』参照)、香港に行くにはここを通り抜けていくことになる。その際、イミグレで中国人なら通行証、外国人ならパスポートが必要になる。その手続きは、外国に出入国するのとほぼ変わらない。

香港島の北側を横断する2階建てトラム。急いでいない時はこちらのほうが情緒があっていい

2つのイミグレは香港側で電車の駅と直結しており、イミグレを抜けると駅があり、電車で香港の中心部まで行くことができる。深圳に近い側の駅は「羅湖」(ローウー)と「落馬洲」(ロックマーチャウ)で、そこから終点の紅磡(ホンハム)までは約45分。そこからさらに地下鉄を乗り継いで、次の駅の尖沙咀(チムサーチョイ)や、香港島側にある中環(セントラル)や銅鑼湾(コーズウェイベイ)といった繁華街に行くことになる。

赤い線が深圳と香港中心部を結ぶ電車の路線(地図はグーグル・マップより)

筆者が深圳に住み始めた2005年頃、記憶が正しければ人民元と香港ドルの為替レートは1.2対1くらいで、香港ドルのほうが強かった。また香港のほうが大陸側に比べて物価が高いということもあり、香港での買い物は中国人にとって高くついた。

銅鑼湾の交差点はいつも買い物客でいっぱい。その一等地に日系デパートのそごうもある

しかし、それから中国の経済発展により人民元が強くなっていき、2007年ごろを境にほぼ1対1のレートになり、その後は立場が完全に逆転して、人民元1に対して香港ドル1.2というレートになっている。単純計算すると、中国人にとって香港の物価が30%オフになったわけで、中国人たちが大挙して香港に買い物に出かけるようになった。

貿易関税のない香港では、海外のブランド物はもともと大陸に比べて安く、為替レートの変化でさらに安くなったため、シャネルやルイ・ヴィトンといった高級ブランドのブティックは、大陸人の買い物客だらけという状態に。さらには日用品までも香港で買うようになっていった。そのため連休ともなると、香港に行くイミグレは長蛇の列となり、ここを抜けるのに1時間以上かかるなんていうこともよくあった。

筆者が深圳に住んでいたころは仕事で香港に月1回は行っており、その度に、深圳では買えない日本の食品や、日本の本(主に古本)などを買って帰っていたものである。

香港の半島側と香港島を結ぶスターフェリー。潮風に吹かれながら渡るのもまた良し

夜になると、香港から帰ってきた買い物客たちが、買い物袋を大量に持って深圳のイミグレから出てくる

About 佐久間賢三 (40 Articles)
週刊誌や月刊誌の仕事をした後、中国で日本語フリーペーパーの編集者に。上海、広州、深圳、成都を転々とし、9年5か月にもおよぶ中国生活を経て帰国。早稲田企画に出戻る。以来、貧乏ヒマなしの自転車操業的ライター生活を送っている。