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魔都上海を巡る その5「紹興酒と娘の慶事」

スーパーで買った1.5リットル入り21.8元(約420円)。街の専門店で紹興酒を買い始める前、上海人の友人に「安いわりに美味しい」と薦められて買ったものだ。

 今回は、前回に少し出てきた「女児紅」という銘柄の紹興酒について。「女児紅」は中国語読みだと「ニューアールホン」となる。ウィキペディアによると、この「女児紅」というのは、本来は銘柄の名前ではなく「中華人民共和国浙江省の習慣。女児が誕生した際に仕込んだ紹興酒をその子が嫁ぐまで寝かし、結婚の際に嫁ぎ先に持参するというもの」なのだという。

 調べてみると、この習慣の由来にはちょっとしたストーリーがあった。

 その昔、紹興の地で紹興酒を作っていた男に娘が産まれた。そのお祝いに男は大量の紹興酒を仕込んだ。それが出来上がると、祝いの席で友人たちに振る舞ったのだが、作りすぎたためか酒が余ってしまった。

 そこで男は、紹興酒が入った甕(かめ)に封をして、その甕を庭の樹の下に埋めておいたのだが、いつしかそのまま忘れてしまっていた。

 その後、その娘が成長してお嫁にいくことになった。その祝いの宴会をしていた時、父親であるその男が、かつて地面に埋めておいた紹興酒の甕のことを思い出した。

 さっそく掘り起こして封を開け、飲んでみると、まろやかな味になっていて美味い。これが「女児紅」という名前の由来だそうだ(「紅」は日本と同様、お目出度い色)。

 この故事に出てくる紹興酒はおそらく10数年物だっただろうが、スーパーで買ったこの甕入り女児紅は3年物。さすがに3歳の女の子を嫁にだしたら犯罪だ。お酒の味自体は、上海人が薦めただけあって、それほど甘くなく、確かになかなかの味だった。

 専売店で紹興酒を買うようになってから、女児紅の8年物というのを買って飲んだことがあるのだが、ちょっと甘かった。同じ女児紅といっても、材料や製造方法が違うのかもしれない。

 さて、冒頭で述べた「誕生した時に仕込んで、結婚する時に嫁ぎ先に持参する」という習慣。ワインでいえば、娘の生まれ年のワインを買って貯蔵しておいて、成人した時や嫁入りの時に飲むといったところだろうか。

 ただし、成人した時ならちょうど20年で飲み頃になっているだろうが、嫁入りする時に飲むと決めてしまうと、いまどきの娘、30過ぎても結婚せず、ずっとパラサイトのまま……なんていうこともありうる。そうなった場合、熟成しすぎて、せっかくのワインが酢になってしまう可能性もあるから注意が必要だ。

市場の脇にある露天で売られていた、竹編みに入れてローストした鴨の丸焼き。紹興酒に合いそうだ。

市場の脇にある露天で売られていた、竹編みに入れてローストした鴨の丸焼き。紹興酒に合いそうだ。

 最後に余談ではあるが、納豆と紹興酒は最悪の組み合わせなのでご注意を。普通なら納豆をツマミに紹興酒を飲むことなどないのだが、先日、家で紹興酒を飲んでいたらツマミが足らなくなり、冷蔵庫にあった納豆で飲んでみたのだ。

 すると、発酵系の酒と発酵系の食品の相性が悪かったのか、口の中で風味の日中摩擦が勃発し、収集がつかなくなってしまった。やはり上海の酒には上海の料理を合わせるのが一番のようである。

 上海を代表する酒をご紹介したので、次回からは上海を代表する小吃(軽食)をいくつかご紹介していこうと思う。

佐久間賢三
About 佐久間賢三 (31 Articles)
週刊誌や月刊誌の仕事をした後、中国で日本語フリーペーパーの編集者に。上海、広州、深圳、成都を転々とし、9年5か月にもおよぶ中国生活を経て帰国。早稲田企画に出戻る。以来、貧乏ヒマなしの自転車操業的ライター生活を送っている。