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精神障害者が働き続けるコツとは?「こんぼ亭」レポート

 2014年も残りわずかとなった12月20日。浅草浅草寺にほど近い、すみだリバーサイドホールで、第25回こんぼ亭「働き続けるコツと就労支援のツボ」が行われた。こんぼ亭は、雑誌「こころの元気+」の発行をはじめ、メンタルヘルス当事者のための情報提供をさまざまな形で行っている特定非営利活動法人地域精神保険福祉機構・コンボが定期的に行っているイベント。毎回、メンタルヘルス当事者にとって気になるテーマをチョイスし、どうしたら、よりよい生活を送れるか、という視点で講師の話や質問コーナーを設けて伝える、当事者目線のイベントだ。

 この日のテーマは『就労』。現在、従業員50名以上の会社は2%以上の障害者を雇用しなければならないという障害者雇用促進法のもと、従来の身体障害者や知的障害者だけではなく、精神障害者の雇用も進んできているが、まだまだ狭き門であったり、さらには就職しても長続きしないという問題が浮かび上がってきている。

 今回の「こんぼ亭」に登壇した立教大学心理教育相談所の宇田亮一氏によれば、精神障害者の就労は急増しており、いわゆる障害者枠での就労数、約40万9000人のうち、身体障害者は74.3%の約30万4000人。知的障害者は20.2%の約8万3000人に対し、精神障害者は5.4%の約2万2000人と、まだまだ割合的には少ないものの、精神障害者の新規求人申し込み件数で見ると、平成16年度は1万467件であったのが、平成25年度は6万4934件と6倍以上にのびているという。

 しかし──と、宇田氏は続ける。独立行政法人高齢・障害・求人者雇用支援機構の調査結果によると、せっかく就職しても1年以内に辞めてしまう精神障害者は少なくなく、1年後に同じ職場に定着している人は約41%。つまり、半分以上の人が1年以内に辞めてしまうのだという。

 統合失調症などの精神疾患は、急性期には幻聴・妄想などの症状も起こるものの、現在は薬も進歩して、一旦症状が落ち着けば、服薬を続けながら落ち着いて日常生活を送り、職業生活を送ることも十分可能になっている。もともとの知的レベルが高い人も少なくなく、せっかくの人的資源を社会のなかで活かすことは、社会の活性化のためにもどんどん進めるべきだろう。

 その一方で、精神疾患特有の繊細さのために、時に体調が安定しなくなるなどの理由から、就職してもなかなか継続することができないケースが少なくないことは、残念な問題だ。

 今回の「こんぼ亭」では、精神疾患の当事者も開発に携わったという、Webシステム「SPIS」というソフトが取り上げられ、当事者がその日その日の状態をこのソフトで上司に伝えることで、勤務の継続につながったケースが紹介されていた。

仕事をすることで体調が良くなる

そんなこの日の「こんぼ亭」のプログラムのなかでも、実際に就労を続けている当事者ふたりの話は、参加した人たちにも参考になっただろう。

「最初は電車に乗るのもしんどかったが、仕事を続けるうちに小さな自信がつみあがっていった」「体調を崩しても、そのことを受け入れてくれる周りの環境があれば乗り越えられる」「仕事をすることで生活のリズムができる」「仕事をしていた方が再発しにくい」といった話が挙がったが、これはこれから精神障害者の雇用を始めようとする会社にとっても、とても参考になる話だろう。

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 最後に、宇田氏が当事者ふたりの話を受けて、「精神障害者の雇用を通じて、企業全体としても、人は人を仕事のなかでどう扱うべきか、という根本の課題を見直すことができるのではないか」と語っていたのが印象的だった。

 なお、今後の「こんぼ亭」のスケジュールは、2015年1月31日に「自傷や依存やめたい! でもやめられない」。2月28日に「発達障害者の就労をめぐって」が予定されている。参加申し込みはコンボで受け付けているので、興味がある方は「NPOコンボ」で検索してみてはいかがだろうか。

里中高志
About 里中高志 (9 Articles)
1977年埼玉県生まれ。早稲田大学第一文学部卒。大正大学大学院宗教学専攻修了。精神保健福祉士。フリージャーナリスト・精神保健福祉ジャーナリストとして、「サイゾー」「新潮45」などで執筆。メンタルヘルスと宗教を得意分野とする。著書に『精神障害者枠で働く』(中央法規出版)がある。