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vol.12「青学優勝でバブル大騒ぎの箱根駅伝は、東京一極集中のアベノミクスの悪例の一つ」

 正月の箱根駅伝は、2000年代に入ってから、バブル大人気になっている。かつて大晦日の格闘技ブームは去り、元旦開催のサッカー天皇杯は日にち移動し、同じく元旦の実業団ニューイヤー駅伝は細々としたままなのに、箱根だけは人気急上昇。だけどこれは、関東地区の大学だけに出場権利があるという、関東学連が主催する地方大会に過ぎないのが、正体なのであるが。

 だから全国の長距離高校生は、関東の大学だけに集中することになる。近年の高校駅伝の優勝校、例えば世羅(広島)も、豊川(愛知)も、鹿児島実業も、佐久長聖(長野)も、仙台育英も、すべて優勝メンバーは首都圏の大学に一極集中しているのだ。今年話題の「山の神」青学の神野くんにしても、愛知の選手である。

 結論を言えば、主催は関東学連であっても、さっさと出場枠を全国に広げなければならない。九州も、関西も、北海道の大学も出場させなければ。なのだが、日本人特有の縄張り根性で、うまいものは他人に配らない。スポンサーが付き、テレビ視聴率が28%にも上り、読売新聞も含めた主催共催は大儲けしているのに、それだけにあぐらをかいているわけだ。

 これじゃあ、地方創生のアベノミクスの逆方向でしょ。地方の学生長距離スポーツは過疎化の真っただ中。いや実は、政府も案外それを大歓迎しているのではないかと思われるほど。

 今年の2区区間賞の東洋大の服部勇馬くんは言っていた。「こんな関東の学生記録会で勝つことよりも、5年後の東京五輪を夢見ている」。

 そうなのだ。政府は5年後の五輪に向けて、ライフル射撃だとか、卓球など、メダル強化競技を決めている。長距離にしても同じこと。その根底にスポーツ国家を目指すとは言っているが、それがこんなアンバランスでいいはずがない。

 話を拡大すれば、五輪主催国は、新競技を提案できる権利があるそうだが、「駅伝」を五輪に加えようという話は、金輪際聞いたことがない。「野球」と「ソフト」の復活という、芸のない話をするくらい。

 我々は、団体種目が好きなのだ。力を総合すれば戦えると。学生駅伝程度で国家イベントになるくらいなら、五輪に「駅伝」を加える知恵くらい思いつくと思うのだが、それをいうと「アフリカ勢にメダルをさわられるだけ」という。いや、ケニアとエチオピアに金銀が奪われても、日本なら銅メダルくらいは取れるだろうというと、「金じゃないとダメだ」。

 五輪とは「金」を稼いで、国家力を世界に示すだけ。まああざといとしか思えない。これで「おもてなし」の東京五輪開催というのだから、口先だけにもほどがある。

 関東地区で流行っている箱根なら、それを全国に。全国で流行っている駅伝なら、それを世界にという、これが「スポーツ外交」であり、「国際化」なのだが、実行力のなさに、何だかなあ……の、ため息だけ。(sp)

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