訪日外国人の急増を喜ぶ前に、心配するべき日本人のビミョーな変化
「ネットを見れば外国のことは分かるから、行く必要はありませんよね」
そんな意味のことを若い人に言われて、仰天したことがある。その人は外国に行ったことがない人だった。ひょっとして海外に行く余裕がないからそう思うことにしているのか?とも思ったがどうもそうでもないらしいので戸惑ってしまった。
それにしても「ネットで分かる」とはどういうことか。海外の街の空気、匂い、距離感、人々の声の音階や表情や食べ物の食感。どれひとつをとっても、グーグルストリートビューやグーグルマップでは分からないことばかりだと私などは思うのだが。
中国の国慶節(建国記念日)の連休で、またもや大量の中国人が日本を訪れている。銀座や新宿で大量のスーツケースを手に爆買いをする姿はもはやおなじみとなった。大都市だけではなく、最近はこんなところにまで?という地方都市や田舎町にも彼らの姿が見える。
中国人だけではない。9月17日の朝日新聞によると、日本を訪れた外国人旅行客は9月10日までで1342万人を超え、過去最多だった2014年の実績を早くも上回っている。観光庁は、今年の年間旅行者数は1900万人に達するとの見通しを示している。
ひるがえって日本人はどうか。JTBがまとめた2014年の日本人海外旅行者数は1690万人で、その前年と比べると3.3%の減少となった。日本を訪れる外国人は増えているのに、海外に出かける日本人は減っているのだ。これも冒頭の若者のように「ネットで見れば十分」という人が増えているのか。
そういう筆者もここ数年海外旅行とはご無沙汰である。日本人の生活スタイルは、とにかく休みはとりにくいのに、海外へ出かける金銭的余裕も失ってきている。そこに円安が追い打ちをかける。
しかし、国外を自分の目で見る事なしに本当のグローバルな感覚が身に付くだろうか。最近テレビでは、外国人が日本をほめる番組が大流行りだが、自分の国をほめるコメントを集めてそれを喜んでいるようでは、どんどん思考は内向きになっていく。このままでは、やがて中国人のほうが日本人よりも国際感覚が豊かになってしまうような気がするのは筆者だけか。…とこんなことを書いている筆者こそ、久しぶりに海外に出かけて見聞を広めたいものである。