移民都市・深圳をゆく その5「一気に大都会に発展した街並み」
経済特区に指定されてからわずか30年あまりで、人口3万人の漁村から中国第4の都市にまで発展した深圳。千年以上の歴史を持つ他の都市とは異なり、古い街並みというものがあまり存在せず、ほとんど何もないところにどんどん街を作っていった。そのため経済特区初期に開発された地域以外は、古い区画にとらわれない広々とした街づくりが行なわれていった。
立ち止まることなく発展を続ける街
まずは道路である。深圳の中心部(香港に近い南側)を東西南北に貫く幹線道路は、どれも幅が広い。片側4車線は当たり前。なかには片側5車線プラスその脇を走る細い道路2車線などというところもある。しかも、幹線道路同士の交差点は立体交差となっているため、信号がほとんどない。まるで高速道路のような道路になっている。
両脇を走る細い2車線の道路は、細い横道に入っていく車や市バスが走るレーンとなっており、幹線道路と細い道路の間はところどころで出入りができるようになっている。深圳の道路は、将来の車社会の到来を見越した造りとなっており、車で移動するには非常に便利になっている。その代わりに、自転車や徒歩で移動するにはあまり便利ではない。幹線道路を渡るには、数百メートルごとにある地下道を抜けるか、高速道路のジャンクションのようになっている交差点の下をグネグネと迂回しながら行かなければならない。
市の中央部にはCBD(Central Business District)と呼ばれる広いエリアがあり、ここには高層ビルが立ち並び、いわゆる副都心のような様相になっている。このエリアには多くの企業オフィスがあり、深圳におけるビジネスの中心地となっている。このエリアも以前は何もなかったところで、碁盤の目のように区画整理され、整然と高層ビルが並んでいる。
このCBDの北側には蓮花山という低い山があり、頂上からはCBDを一望に見渡すことができる。その左右には高層ビルが広がり、深圳の発展を象徴するような眺めとなっている。夜になるとビルの照明とともに屋上からはサーチライトが照らし出され、夜空に向かって光の束を放射している姿を見ることができる。
深圳南西部の海側に行くと、高層マンションが建ち並ぶエリアとなっており、自然も多く、その周囲には新たに開発された公園などもある。高級住宅地もあり、深圳に勤務する外資系企業の外国人駐在員の多くがこのエリアに住んでいる。そのため、欧米風のカフェなども数多い。また日本人学校もこの近くにあるため、家族連れで深圳に駐在している日本人も、このエリアに住むことが多い。
深圳は最初に香港と接する市の南側が開発され、北部および東部は主に工業地帯または港湾地区として利用されてきた。しかし、ここ10年ほどは市の北部に大規模な開発が行なわれており、今後、市の重心が少しずつ北に移っていくことが予想されている。
深圳はこれまで、主な産業は製造業だったが、これからは研究開発やハイテクの分野に移行していくことを目指しており、実際、移行が進行している最中である。深圳は立ち止まることなく先に向かって進み続けているのである。