─臓器移植ガイド─ [26] 10. 終章 それでも医者を続ける 2017/03/27 麻生はとらわれ続けた。何もしないことがあり得ないという思いに……。その強い思いで白昼、瞬間的に体が落下する感覚に襲われるようになった。耐え切れず、とうとう今までの全てをパソコンで記し、プリントアウトして中田に郵送した。 [...続きを読む]
─臓器移植ガイド─ [25] 9. 自らの深い欠陥に恐怖する③ 2017/03/18 以前、中田に大学を去った事情を聞いたことがあったが、しばらくしてから「お前にだけ話しておく」と、別のエピソードを話してくれた。 教授から理不尽な嫌がらせを受けた中田は、ひいきにしてくれていた学部長(基礎医学の教授)に [...続きを読む]
─臓器移植ガイド─ [24] 9. 自らの深い欠陥に恐怖する② 2017/03/10 2008年10月、中田がまた仙台の学会に出るので泊めてくれと電話してきた。ついでにおしゃべりしたかったのだろう、長い電話になった。 「やっぱり旧帝大の外科には、すごい異常者も集まるんだな」 中田は親交のある旧帝大出の [...続きを読む]
─臓器移植ガイド─ [23] 9. 自らの深い欠陥に恐怖する① 2017/03/04 予定外だったのは保険請求の審査を引き受けさせられたこと。麻生のレセプト、つまり診療に対する保険による負担分の請求書は他の医師に比べて圧倒的に金額が低く、医師会から非難された。 「医師の既得権なんだから」 「支払い団体も [...続きを読む]
─臓器移植ガイド─ [22] 8. 悔いるべくして悔いる② 2017/02/26 「俺は医者になるべきじゃなかった」 朝食の後、麻生はぼんやりと医者をやめようという思いを固めた。だが、目の前にコーヒーの香りが立ち上り、さえ子が腕を組んで自分の顔を覗き込んでいた。懐かしい、幼い顔に思い切りしわを刻み込 [...続きを読む]
─臓器移植ガイド─ [21] 8. 悔いるべくして悔いる① 2017/02/18 まず奥井から麻生に電話が来た。 「ありがとう。恩に着る。東浦先生がとても喜んでくれて俺も幸せだ」 どこかよそよそしい口調。麻生も言葉短く祝った。 だが、東浦の電話は底抜けに明るかった。 「お前が世話してくれたドナー [...続きを読む]
─臓器移植ガイド─ [20] 7. 『恩師の為に』を言訳に!② 2017/02/10 ある日女性教師が、一人で病室をのぞき回っている麻生に話しかけてきた。理科を高校で教えているそうで、医学部に行ったのに大学で山歩きに取り憑かれて教師に転進したという。東北の山について、その魅力を話すのだが、彼女はマタギと [...続きを読む]
─臓器移植ガイド─ [19] 7. 『恩師の為に』を言訳に!① 2017/01/25 移植に対しての嫌悪が深まるのに、移植のほうから麻生に迫ってきた。 ついに麻生はセンターの所長を拝命させられてしまったのだが、それと同時に脳死患者が出た場合の報告の義務づけが法律で定められ、そのための研修も受けさせられ [...続きを読む]
─臓器移植ガイド─ [18] 6. 誰の目にも異常な医者④ 2017/01/11 前年の1993年、東京白金のT大医科学研究所病院でも一人の教授が移植施設の指定を得たいがために人の道を外れた行いをしたことが明らかになったというのだ。 ’91年当時、国の方針で移植を行うことのできる施設を選定すること [...続きを読む]
─臓器移植ガイド─ [17] 6. 誰の目にも異常な医者③ 2017/01/03 1994年3月に入ったある日、5ヶ月ぶりに奥井から電話があった。 「『文○春○』にあのQ大の移植が糾弾されている。すごいことが書いてあるよ」 たまたま売店にあった厚い雑誌のその記事を読み始めるうち、麻生は興奮し、激し [...続きを読む]